SynQ Remoteで現場に行かなくても確認・指示が可能にー三谷産業株式会社 青山真也さん/株式会社クアンド 下岡純一郎さん

 
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さて、ものづくり新聞第8回目のインタビューは、三谷産業株式会社の青山真也さん株式会社クアンドの下岡純一郎さんです。三谷産業さんは空調設備工事や情報システムの開発などの事業を手がけられている企業です。
 
まずはじめに、クアンドさんが開発した遠隔作業支援ツール『SynQ Remote』のユーザーである三谷産業さんにお話をお伺いしました。三谷産業さんは実証実験の段階から"SynQ Remote"の開発に協力されています。
 
空調設備工事での現場担当者や職人の方々とのコミュニケーションはこれまで直接現場に行き指示するというスタイルでしたが、現場での階段の登り降りなど負担の大きいものでした。しかし、遠隔作業支援ツールであるSynQ Remoteを活用することで、その負担を大幅に削減されています。開発の具体的な経緯や課題についてお聞きしました。
 
SynQ Remote(シンクリモート)
現場で働く方の負担を軽減することのできる現場仕事に特化した遠隔支援ツール。専用アプリを使って現場に行かずとも、現場にいるかのように指示し、コミュニケーションを手助けします。
 

三谷産業株式会社 青山真也さん

 
🗞自己紹介をお願いします。
「生まれは長野県で、石川県の大学に進んだあと石川県にゆかりのある三谷産業に入社しました。現在は東京都に住んでいて空調首都圏事業部に所属しております。スタートアップ企業など、他社との協業に関する案件も担当しています。」
 
🗞今年での勤務は何年目になるのでしょうか?転勤で東京に来られて見つけた趣味などはありますか?
「今年で東京勤務は4年目になります。趣味は歩くのが好きですね。1時間くらい外を歩いてリフレッシュしています。東京本社が神保町にあるので、その周りも歩くのに良い環境ですね。」
 
🗞神保町はおもしろい街ですよね。さっそくですが、三谷産業さんについて教えていただけますか?
「はい。三谷産業株式会社は石川県金沢市に本社を構える複合商社です。1928年創業で、現在は情報システム関連や樹脂、エレクトロニクス関連の事業、空調設備工事事業などを手掛けています。グループ全体では3000名強の社員が所属しています。」
 
🗞青山さんはスタートアップ企業との協業をご担当されているとのことでしたが、会社全体としてそういった取り組みには力を入れているのですか?
「そうですね。いくつかのアクセラレータープログラムに参画していますし、当社でも「MITANI Business Contest」というビジネスコンテストを主催しています。」
 
🗞創業90年を超える歴史深い企業ながら、新しい取り組みにも積極的な様子が伺えます。社員の方はどのような年代の方が多いのでしょうか?
「20〜40代の社員が多い印象です。2021年4月から無期限の継続雇用制度を構築したので、長く働ける環境だと思います。」
 

SynQ Remoteの実証実験

🗞今回はクアンドさんのSynQ Remoteを実際に使っているユーザー様としてお話をお伺いしたいのですが、クアンドさんとの出会いはどんなきっかけだったのでしょうか?
「クアンドさんとの出会いは、2年前に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが主催したアクセラレータープログラムです。そのイベントに弊社はスポンサーとして関わっていました。いくつかの募集部門がある中、社会インフラ部門に応募していたのがクアンドさんでした。その時、SynQ Remoteのアルファ版を見させていただき、これは面白いと思い声をかけました。その後、実証実験を行いましたね。」
 
🗞実証実験はどのように行なったのでしょうか?
「実証実験は私の所属している空調首都圏事業部という部署とクアンドさんで行いました。首都圏の事業部なので現場は新橋や所沢など東京近辺の建築現場でしたね。福岡のクアンドさんとは物理的に距離があったので、オンラインでのやり取りがメインでした。とはいえ現場に来ていただかないとわからないこともありましたので、何度か来ていただきながらSynQ Remoteの実験を行いました。」
 
🗞SynQ Remoteは現場でのコミュニケーションを手助けするツールですが、導入前はどのような課題がありましたか?
建築現場はまだまだアナログな労働環境です。移動の負担もかなり酷で、何階も階段を登らないといけないような現場もあります。そんな環境で職人さんが作業しているのですが、進めていくうちにわからないことが出てきます。たとえば図面と違っていたりする場合ですね。建築現場は様々な分野を工事する業者が関わり合いながら作業しているので、手元の図面と実際の状況が違っているというのもよくあります。」
 
🗞なるほど。そういった場合はどうするのでしょうか?
「そんな時まずは職人さんと電話で状況を話しますが、電話だけでは説明が難しいので現場を目で見て判断しなければならないことが多く、基本的には現場に急いで向かって確認しなければなりませんその移動がとても大変です。エレベーターが使えない場合が多いので、階段を何階も駆け上がらなければならず、非常に体力を消耗しますね。」
 
🗞現場に常駐している社員さんもいらっしゃいますよね?
「基本的には現場常駐ですが、現場を複数掛け持ちしている社員もおり、すぐにその場で確認できることばかりではありません。また、先輩社員や上司の力を借りないと解決できないこともあり、経験の浅い社員が向かったけど解決できずに先輩や上司を呼ぶというような二度手間も発生していました。」
 
🗞そういった課題がある中、SynQ Remoteを使って実証実験していかがでしたか?
SynQ Remoteはビデオ通話しながら画面にマーキングする、お絵かき機能がありますこれが便利です。SynQ Remoteで現場にいる担当者と先輩社員や上司を繋いで、状況を説明しながら意見をもらうことができるので、何階も階段を登らずに済みます。この肉体的な負担が減ったのが一番嬉しいポイントです。」
🗞何十階も階段を登らないといけなかったのが、ビデオ通話で解決できたらかなり負担が軽減されますね。
「そうですね。移動にかかる肉体的負担は相当大きいので、そこがなくなるのは大きな効果があると感じています。」
 

SynQ Remoteの導入、社内での活用

🗞社内で導入する際は説明会など開催されましたか?
「現場勤務の社員が多いので、クアンドさんにもご協力いただいて2、3回に分けてオンラインで説明会を開催しました。」
 
🗞中にはDXや新しいツールを導入しようとすると、現場のみなさんに浸透しないケースも見られますが、三谷産業さんはいかがでしたか?
「新しいツールを導入して、あとは現場任せではなかなか浸透しないというケースはありました。今回、オンラインでの説明会を開催したことで、現場からでも気軽に説明会に参加でき、SynQ Remoteを徐々に浸透させていくことができたと思っています。現場側の状況に合わせて、時間をとって説明会を開催するというのは大事だと思います。」
 
🗞実際の現場では、確認したいことが起きた時どのような手順でSynQ Remoteを活用されているのでしょうか?
「現時点では、まず電話などで職人さんと現場担当者でその問題を共有します。そこで解決しなかった場合、先輩社員や上司とSynQ Remoteを繋いで、コミュニケーションを取るといった流れです。」
 
🗞三谷産業の社員さん同士がSynQ Remoteを使って繋いでいるのですね。建築現場でのスマートフォンやタブレットの利用は一般的になってきていますか?
「そうですね。スマートフォンを使う職人さんは結構います。弊社も2、3年前からほぼ1人1台タブレットを支給していて、写真撮影や資料作成もタブレットで行なうことが多いです。SynQ Remoteもアプリを起動して通話ボタンを押すだけなので、操作説明に際して難しいことは特にありませんでしたね。」
 
 
🗞三谷産業さんがSynQ Remoteを使っている様子を見て興味持たれた業者さんも多いのではないですか?
「はい。現時点では社内でのコミュニケーションにのみ利用しています。今後は協力会社など外部の方々とも利用できないか検討しています。」
 

実際にSynQ Remoteを使ってみて

🗞改めて、SynQ Remoteを導入されてどうですか?
確認のために現場に駆けつけるという、肉体的な負担を減らすことができて助かっています。ビデオ通話で同じ画面を見ながら確認作業ができるので、不便なくコミュニケーションがとれます。」
 
🗞電話で説明して、移動して、階段を何段も登って・・・という時間の短縮にも、体力的な部分でも効果がありますね。
「はい。SynQ Remote導入前は、現場に先輩や上司が駆けつけるまでは判断待ちになるので、作業がストップしてしまっていました。そういった待ち時間のストレスからも解放されましたね。」
 
🗞なるほど。納期もありますし、待ち時間って結構つらいですよね。
「そうですね。様々な部分を効率化していくうちに、待ち時間のストレスがより浮き彫りになっていたので、長時間作業を止めなくても良いというのは精神的にもストレスが少ないです。」
 
🗞活用されている具体的な場面例を教えていただいてもよろしいでしょうか?
「空調工事でドレン配管工事という作業があるのですが、このドレン配管の施工はかなりシビアにチェックする必要があります。というのも、特に改修工事においては作業する天井の中には建築部材や電線などがありますが、ルートが違ったり干渉したりしないようにしなければなりません。図面通りにできれば良いのですが、職人さんがいざ施工しようとすると、図面にはないものがある場合もあります。邪魔しているものを取り除くのか、ルートを変えるのか、など判断しなければならないのですが、現場にいる若手や経験の浅い社員ではその判断がつかないことがあります。」
 
🗞現場でまず職人さんと話すのは若手の社員さんであることが多いのですね。
「そうですね。実際に図面を書いているのは、上司や先輩社員であることが多いので若手や経験の浅い社員では判断できないことがあります。そうなると、判断がつく人に電話をかけて指示を仰ぐのですが、問題の箇所の説明が難しく、”ここがこんな風になっていて”とか”これってなんですか?”と相手にうまく伝えられないというもどかしさもありました。なので、どうしても伝わらない時は先輩や上司が現場を見て判断するしかなかったんですよね。」
 
🗞そういった状況に陥ることはどのくらいの頻度であるのでしょうか?
1日に何回も起きていますね。建築工事や電気工事なども含めた現場全体だと何十回とあるのではないでしょうか。建築現場には水回りを工事する業者や、床や壁、天井を施工する業者、我々のような空調を施工する業者など様々な職種が出入りしています。それぞれが図面作成して、最終的には全業者で調整しているのですが、綿密に調整しないと施工の際にトラブルになることがあります。」
 
🗞そういった状況でも、SynQ Remoteがあれば、リモートで状況を確認し判断することができるというわけですね。
「はい。状況をビデオ通話で見せられるので、”ここがこうで”とか”これってなんですか?”という言い方で質問できるのが便利ですね。図面にミスや抜けがあった場合でも、現場での確認作業やコミュニケーションがスムーズになるので、すばやく対応できるようになりました。」
 
🗞SynQ Remoteが社内でしっかりと根付いているのですね。
「現場から挙がった改善要望をクアンドさんが親身になって聞いてくださることも根付いた要因と思っています。たとえば、最初は画面が縦しか対応していませんでしたが、現場で写真を撮る時などは基本的に横画面なので、縦画面だけだとちょっと厳しいという話をしたら、クアンドさんはすぐに対応してくださいました。」
 
🗞なるほど。現場に寄り添ったツールへと進化しているのですね。SynQ Remoteの活用に関して今後の課題はありますか?
「現場で使っている社員の声や、活用しながら感じたことなどをどうやって効率的・効果的にフィードバックしてもらうかが課題ですね。もっと活用していくためでもありますし、現場の声をクアンドさんに届けたいというのもあります。」
 
🗞今後の展望などを教えてください。
「世の中の技術がめまぐるしく進歩していく中で自らの技術開発だけでなく、優れた技術を持つ他社と協業していくことで自分たちも変化していきたいと考えています。」
 
🗞最後にSynQ Remoteを導入しようと考えている方へメッセージをお願いします。
SynQ Remoteによって移動や時間など負担を軽減できたところが多々あります。弊社もSynQ Remoteを使う前は様々なツールを試していましたが、SynQ Remoteは実際に使ってみると画期的でとても使いやすいです。無料のトライアル期間も設定されているようなので、まずはぜひ使ってみることをおすすめします。」
 
 
ここからは、SynQ Remoteを開発・提供している株式会社クアンドの下岡純一郎さんにお話をお伺いします。クアンドさんは福岡県北九州市で地方産業のアップデートをミッションとして掲げ、IoT・DXを活用した企業支援などを行なっている企業です。
クアンドさんは、ソフトウェアの開発・提供を通じた企業支援に取り組まれています。現場仕事に特化した遠隔作業支援ツール『SynQ Remote』の開発の背景や株式会社クアンドの目指すところなどをインタビューしました。

株式会社クアンド 下岡純一郎さん

 
🗞自己紹介をお願いします。
「はい。株式会社クアンドCEOの下岡純一郎です。生まれは福岡県北九州市で、高校生まで北九州市にいました。その後九州大学に進学し、卒業後は県外で働いておりました。2017年4月にクアンドを立ち上げて、現在5年目に突入したところです。」
 
🗞ビジネス面の経歴もユニークですよね。
「そうですね。元々実家が建設設備業を営んでいました。規模は違いますが、三谷産業さんのような配管や電気工事を行なっている会社です。実はクアンドの北九州オフィスもその設備会社の1階を間借りしているんです。私自身のキャリアは、はじめは外資系メーカーのP&Gで製造管理や工場の立ち上げを担当していて、その後博報堂コンサルティングで広告会社系のコンサルタントとして働いていました。その後クアンドを企業して現在に至ります。」
 
🗞クアンドさんはどのような会社でしょうか?
「事業は大きく分けて2つあります。1つはSynQ Remoteというコミュニケーションツールのサービス提供です。もう1つは製造業をはじめとした地域の企業様向けのシステム開発等のコンサルティングを行なっています。たとえば、原子力発電所のバルブメーカーさんと一緒に、従来の物を売る業態からサービスを売る業態へ転換するためのシステム開発を作ったり、釣具屋さんと一緒に釣りのアプリケーションを開発したりしていました。設立から3年半ほどはこういったDX事業が中心でした。そこから自社プロダクトを作ろうということで、最初に開発したのがSynQ Remoteです。」
 
🗞地元企業へのコンサルティングやDX推進に尽力されているのですね!設立から4年ほど経過しておりますが、現在クアンドさんは何名くらいの規模なのでしょうか?
「正社員が11名で、業務委託が4から5名、役員2名の合計20名ほどですね。規模は徐々に拡大しています。」
 
 
🗞地域企業や現場の方々と一緒にお仕事をする機会が多いと思うのですが、みなさん製造業や現場作業にはお詳しいのでしょうか?
「現場系のシステム開発をやっていたところもありますし、実家の建設現場へも足を運ぶ機会があるので、現場とは距離が近いと思います。」
 

SynQ Remoteの特徴

 
🗞SynQ Remoteについて特徴や機能など教えてください。
「まず何よりアプリをダウンロードすれば簡単に使うことができるというのは大きな特徴です。新たなデバイスの購入などは不要で、ご自身のスマホから簡単にはじめることができます。もう1つの特徴は、スマホから電話のようにかけてPCを鳴らすことができる点です。ウェブ会議などは決められた時刻にそれぞれが接続するタイプですが、SynQ Remoteはスマホで電話帳からPCに通話接続することができます。もちろん逆のPCからスマホも可能です。オフィスにいても現場にいても電話感覚で使っていただけます。」
 
🗞ありそうであまりない機能ですよね。ちょっと確認したい時など、ウェブ会議用のURL発行する手間なく繋げられるのは便利だと思います。
「そうなんですよね。繋いだ後は、ポインタ機能が一番便利な機能だと思います。現場のスマホにポインタを出したり、遠隔からシャッターを切って写真を撮ったり、その写真に注記を書いたりマークをつけることができます。あと結構好評なのが、音声をテキストに変換できる機能です。工事している最中など、現場で音が聞きづらい時などに役立ちます。」
 
🗞手が塞がっている時なども役に立ちそうですよね。音声のテキスト化は開発の初期段階から実装しようと考えておられたんでしょうか?
「音がうるさい環境でコミュニケーションを取るために、最初は単純にテキスト入力できる機能を考えていました。でも実際自分たちでやってみたら、タイピングが結構大変で。笑 そんなに早くタイピングできないですし、入力に苦労したのでその結果音声をテキスト化するというところに辿り着きました。」
 
 
🗞なるほど。開発しながら辿り着いたところなのですね。SynQ Remoteを開発しようと考えたきっかけはありますか?
「たとえば、建設現場は現場管理者と職人さんで仕事が成り立っています。現場管理者はいわゆるベテランの技術者なんですが、有資格者で経験も豊富な人材となるとかなり少ないんです。ただ仕事自体が減っているわけではないので、管理者をどう動かすかというのは課題でした。それに、従来は1つの現場に1人の管理者が常駐するのが当たり前でしたが、本来は1人1現場以上回せるなと思っていました。物理的な限界はもちろんありますが、本来は複数箇所担当できるはずなんです。数少ない現場管理者が1人1現場以上担当し活躍してもらうためには、その人の時間を確保しなければなりません。と考えた時に、移動の時間を減らすというところに着目しました。」
 
🗞そういったお考えから、実際にアプリを開発しようと決断されたきっかけはあったのでしょうか?
「はい、ある時父が経営している建設会社でベテランの管理者が退職したことがありました。その方は各現場をサポートしている管理者で、そういった方って限られてくるので仕事が集中しやすいんです。一方で、その穴を埋めるために入社して数年の若手が現場に放り込まれて、判断できずに職人に怒られているというようなことも起きていて。それでも会社としては受注を取り続けなければいけないので、いろいろなところがうまくいっていませんでした。でもこれって何かが誰かが悪いという問題ではなく、仕組みの問題だと思うんです。たとえばGoogleのスプレッドシートのように何人もの人が同時にアクセスして、作りながらコラボレーションしたり、保存して後から確認するという世界とあまりにもギャップがあると思います。建設現場にそういった世界を取り込むことができれば、フィールドワークの方々の働き方も変わるし、イメージアップにも繋がると思ったことがきっかけです。」
 
🗞そこからアプリ開発へ進んで行ったのですね。でも、既存のツールもたくさんありますが、何か試されたりしたのでしょうか?
「やはり最初は身近なLINEなどでできるのではと考えて試しました。でも試してみるといろいろ難しい点が出てきたので、これはアプリを開発するしかないと。作り込みながらも既存ツールでいろいろ試して、現場で使うには難しいと感じたところをひとつずつ拾っていき、機能に搭載しました。」
 
🗞こういう機能を作ろうというディスカッションは社内で行われたのでしょうか?
「まず、三谷産業さんにご協力いただいて、どういったことに困っているかというのを把握しました。それを基に機能を考えて、優先順位を付けて実際に開発という段階では社内で議論しましたね。」
 
🗞機能もどんどん作り込まれて、現場が使いやすいアプリに進化していったのですね。
「三谷産業さんとアクセラレータープログラムで取り組んだ期間もちろん重要な期間でしたが、そこで終わりにならずに継続的にお付き合いさせていただいているのが何よりもありがたいですね。現在もフィードバックをいただいたり、開発面でもご協力いただいています。」
 

現場で使いやすいのが最優先

🗞SynQ Remoteを拝見させていただいたのですが、すごくシンプルですよね。現場で必要な機能を厳選しているような印象を受けました。開発もそういった方向性だったのでしょうか?
「そうですね。やはり現場で求められているのは使いやすかどうかなんです。高度な技術を使っているとかそういうのは必要なくて、使いやすいものにしなければならないというのは常々頭にありましたね。」
 
 
🗞現場の方々にとって使いやすいのはどういうものかというのを知るのが難しいと思うのですが、苦労されたり工夫されたことはありますか?
「悩むことは多々ありますね。まず形にして使ってもらって感想を聞いていくと、その背景に開発のヒントが隠されていることはあります。たとえば先ほど三谷産業さんのインタビューで例にあがった横画面の件は、我々だけでは思いつかなかった機能です。何気ない感想にも開発のヒントがありますね。」
 
🗞細かいことですが、現場の方々が使いやすいようにボタンの色やサイズ、配置などは細かくチューニングされたのですか?
「その点に関しましては、SynQ Remoteのデザイナー担当に現場向けのソリューション開発の経験があったので、割とスムーズにいきましたね。」
 

製造業での活用

🗞現場作業で使いやすいように作られたSynQ Remoteですが、製造業でも活用できそうなシーンはありますか?
「製造現場の設備を製造している企業様で導入いただいた実績があります。工事現場と一緒ですが、自社の製造した設備に何かトラブルがあった場合、お客様に電話で呼ばれて現場に向かうのですが、ホースが繋がれていなかっただけなどの簡単なミスであることも多いそうなんです。でも、出張として来ているし本来なら請求しなければならないけど、サービスとして飲み込むか・・・という悩みがあると。あと、そもそもまず確認してから本当に現場に向かわなければいけないかどうか見極めたいというニーズもありました。これは国内はもちろんですが、製造拠点の多い海外でも同様です。コロナ禍で海外へ行けなくなったので、現地のスタッフと繋いで稼働を確認したいという声もありましたね。」
 
🗞なるほど。出張して現場で確認ができなくなった企業も活用できそうですね。
現地に人はいるけどその場では判断はできないという場面って結構多いんですね。たとえば行政の家屋調査などにも活用できると思います。行政から委託された業者が実際に調査するとしても、判断に迷うところは結局行政の人が呼ばれていたので、そんな場面でSynQ Remoteを使ってもらえれば、遠隔地にいながら判断することができます。」
 
🗞今後どういった方々に使ってもらいたいというイメージはありますか?
「まずは三谷産業さんのような建設業ですね。次に、空調などの施工やメンテナンス業の方々。病院やホテルなどの施設にメンテナンスとして定期的に巡回しているケースもあれば、トラブル時にお客様に呼ばれるケースもあります。最後に自社で設備を開発されているような設備メーカーさん。現在この3つのカテゴリを想定しています。」
 
🗞今後はその3つのカテゴリを意識して機能を増やしていくと思いますが、今後はどういったコンセプトで開発を進める予定ですか?
もっと現場で使っていただいている方の声を拾っていきながら、SynQ Remoteをブラッシュアップさせていきたいと考えています。一方で、これは三谷産業さんとの間でも話になったのですが、SynQ Remoteを使ってコミュニケーションを取る際、ほとんどの場合において何か対象物があって、それに対してどうかということが話し合われています。だとすればその対象物の正しいデータがクラウドに上がっていればもっと適切な指示ができるのではないかと考えるようになりました。たとえば設備で何かトラブルが起きた時に、視覚的な情報だけでなく”この設備って過去にこういう保全しているよね”とか”この方式ってこういうトラブルよくあるよね”という情報が付属されていると、より良いサービスになると思います。メンテナンスのデータベース開発などさらに進化させていきたいです。」
 
🗞なるほど。SynQ Remoteからさらに進化を目指しているのですね。今後の展望を詳しくお聞かせください。
「まずはSynQ Remoteの機能をもっと充実させて、お客様に満足してもらえるようなサービスに進化させていきたいです。SynQ Remoteで解決できる課題はほんの一部ではあると思いますが、今後を見据えてお客様の持っている課題をひとつずつ汲み取って形にできる組織でありたいです。そしてゆくゆくは、先ほど言ったメンテナンスの部分や、元々従事していた工場系IoTやシステム開発などの経験も活かして、最終的には現場のリモート化を広くサポートできるようなサービスを提供していきたいと思います。」
 
🗞下岡さんご自身のことで、いま取り組まれていることがあればおしえてください。
「実は今、早起きを頑張っています。早い時間から仕事する方が、時間を有効に使えるんじゃないかと思って、5時半くらいから働くこともあります。笑」
 
🗞それはなかなか早いですね!社員のみなさんは大丈夫ですか?笑(本日はクアンド社員の方々が出席してくださいました。「朝起きたら早朝から結構メッセージ入ってますね。笑」とのことでした。)
 
🗞最後に読者の方々へメッセージをお願いします。
「金融やコンサル、ITといった領域においては拠点が東京に集中するのは当然だと思います。でもやはり世の中見渡すと、製造業や建設業で働いている方が過半数なんですよね。そういった世界で働いている方々の働き方を変えるというところにフォーカスしていきたいなと思います。あと、それぞれの土地に合った産業がその土地に根付いていて発展していくことが大事だと思います。我々が福岡で地元産業を支援したいと思っているのもそういった理由です。この地域から日本各地、世界に提供できるサービスを開発していきたいですね。」
株式会社クアンド
所在地:福岡県北九州市八幡東区枝光2-7-32
代表取締役CEO 下岡 純一郎
 
〜ものづくり新聞編集部より〜
ビデオ電話のツールは数多ありますが、現場の方々にとって使いやすいものであるかどうかは、やはり現場の方々の声を聞いてみるのが一番だと思います。コロナ禍によって様々な仕事がリモート化されていますが、現場でしかできない仕事も多くあります。とはいえ、現場の悩みを丁寧にヒアリングしていくことで、少しでも負担を減らすことができます。このSynQ Remoteは建設現場では当たり前だった現場に行って確認するという作業の負担を軽減してくれます。青山さんは何よりもこの肉体的な移動の負担が減ったのが良かったとおっしゃっていました。遠方とのコミュニケーションにお困りの方々に役立つツールだと思います。
SynQ Remoteや三谷産業さんでの活用例の詳細などにご興味のある方がおられましたら、編集部のご相談窓口までご連絡ください。まだ直接相談する段階ではない、このサービス以外のことも知りたい、という方もお気軽にご連絡ください。