ものづくりって、人が出ると思います。 a.w.s.清澄白河店 店長 森さん
シルバーアクセサリーを実際に自分でクラフト体験できるお店が流行しているという情報を入手しました。10-20代の方々が多く、特に男女カップルで体験に訪れる方々が増えているというのです。ものづくり新聞取材班は東京・深川の下町にその体験工房があるとお聞きし、お伺いしました。
東京メトロ地下鉄の半蔵門線・清澄白河(きよすみしらかわ)駅を出ると資料館通り商店街という通りがあります。商店街を少し歩き、お寺が何軒か並ぶエリアにガラス張りで明るい雰囲気のお店がありました。a.w.s(エー・ダブリュ・エス)清澄白河店です。株式会社アトリエソエタさんが運営するシルバーアクセサリーづくりの体験工房です。
ものづくりが好きでこの仕事を
清澄白河店・店長の森由香子(もりゆかこ)さんにお話をお伺いしました。
ーー森さんの自己紹介をお願いします。
茨城県の出身です。のどかでいい土地ですが、清澄白河までつくばエクスプレスで近いんですよ。
ーー子供の頃はどんな子でしたか?
運動は苦手でよく転ぶ子供でした(笑)なのでもっぱらインドア派でした。小学生のときには手芸クラブに入っていました。
ーー中学高校は部活など熱中されたことはありますか?
ピアノをずっとやっていたこともあり吹奏楽部でフルートを担当していました。
ものづくり好きな家庭で育つ
ーーご家族もお好きだったんですか?
祖母が手芸が好きで、材料がたくさんあったんです。毛糸やビーズなどいろんな材料があり何でも作れました。母も同じように好きだったので材料をたくさん持っていました。母はとにかくいろんな材料を集めるだけでも好きでした。布といってもいろんな柄や素材があり楽しかったです。そんな環境が影響したのかもしれません。
ーー大学ではどのようなことを学ばれていたのですか?
作業療法士の学校でリハビリを勉強していました。人のためになるような仕事がしたいと思って目指していましたが、体力的に大変でした。介護福祉士の資格を取れる短大に入りなおし、資格を取って働きだしましたが、それも大変でした。長く勤めるのは難しいと感じていた頃にガラスに出会いました。
ーーガラス体験に行かれたんですか?
カルチャーセンターのようなところでガラス細工の体験を見つけて行きました。その時ちょうどガラスのお店の求人を見つけて応募しました。
好きなことを仕事に
ーーそれで転職されたんですか?
「いまを大事にしよう」と思ったんです。将来を考えて介護の仕事をしていましたが、いま自分の好きなこと得意なことをやった方がいいと考えました。介護の現場にいる人とお話しすると「まだ若いんだから好きなことしたほうがいいよ」みたいなことをおっしゃる方もいました。
ーーガラスのお仕事はどのようなお仕事でしたか?
動物などの小さいガラス細工を販売するお仕事でした。そのガラス細工を組み合わせてセットを作り、背景に絵付けをして販売するということもしていました。自分なりに世界観を作っていくのが楽しかったです。
ーーそのお仕事は楽しかったですか?
店長として任されたこともあり、ものづくりだけではなく、お店の運営やシフト作成などいろんなことを担当しました。それまで自分はそういう仕事は苦手だと思っていたのですが、やってみると意外にできました(笑)
ミクロモザイク
その頃、「ミクロモザイク」の資格をとったんです。
ーーミクロモザイクですか?
ガラスの小さなパーツを組み合わせるイタリアの伝統工芸です。
(編集部注:ミクロモザイクは、小さなガラス片をパズルのように組み合わせて描くアクセサリー。イタリアのガラスモザイクと、日本のバーナーワークを組み合わせた歴史があるのに新しい工芸です:日本ミクロモザイク協会HPより)
ーーこれを1つ作るのにどれくらいかかるのですか?
この作品ですと3時間くらいかかります。
ーーおお、そんなに集中されるんですね!
はい、できるまで夜遅くでも頑張って作るタイプですね。
ーー森さんは休日どのようにお過ごしですか?
前職のときに友人と休日が合わないということで一人旅に行くことが多く、岩手や長野のガラスのお店を回っていました。トンボ玉や彫金などのものづくりの体験に行くこともあります。
想いを形にするサポートを
ーーa.w.s.のお店では自分自身が作るのではなく、お客さまが作るのをサポートするという立場ですが、どのようなことに気を遣われていますか?
「想いを形にする」サポートをしたいと思っています。カップルの方々も多いのですが、どういうものを作りたいのかをお話から聞き出し、どのリングがいいのかバングルがいいのか、どんなリングがいいのかといったことを具体化するお手伝いをしています。ご予約いただいた方でもどういうものを作るか事前に想定されていない方も多いのですが、その場でお話しながら決めていきますのでご心配いただかなくても問題ありません。
ものづくりって人が出ると思います
ーーでも最初は緊張しますよね?
お客さまは最初にお店に入ってくる時にはすごく緊張されていることも多いのですが、お店に入ってしばらくお話するうちにどんどん緊張がほぐれて楽しそうにされている様子を拝見すると、「よしっ!」って思います。
ーーものづくりに対しての想いを教えてください。
ものづくりって、人が出ると思います。言葉にするよりも作品にしたときのほうがその人らしさが出ると思います。同じものを作っているカップルの方々でもそれぞれぜんぜん違うものができたりします。自分たちがしたいようにできる環境を整えることも私たちの仕事だと思っています。
とりあえずやってみていいんだよ
ーー将来ご自身がやりたいことはありますか?
仕事としては、限られた時間の中でお客さまにどうやって楽しくものづくりを体験いただけるかもっと工夫していきたいと思っています。
個人的なことですが、シルバーとガラスを組み合わせた作品を作ってみたいと思っています。将来的に、ですけども。フレームをシルバーにして、柄をガラスで融合させるといった作品も可能だと思うんです。まだそこまではできていないのですが、これまでのガラスの経験とシルバーの経験を融合できたらいいなと思っています。
ーー読者の方にメッセージをお願いします。
ものづくりってハードル高いと思っている方も多いと思うのですが、とりあえずやってみていいんだよ、そんなに難しくないんだよ、とお伝えしたいです。やろうと思えばみんなできるんだよ!と思って欲しいです。
シルバーリング作りを体験!
ものづくり新聞広報担当の井上がシルバーリング作りを体験しました。(紙面の関係で全ての工程をご紹介していませんのであくまでも概略としてご覧ください)
0)リングのサイズ測定
右左の手のどの指のリングかを決め、サイズを測定します。
1)刻印
文字を掘った「金属の文字タガネ」を使い、ハンマーで刻印していきます。
2)研磨
刻印したリングの表面を磨き光沢をつけます。
3)つち目
ハンマーで表面を叩き、リングの表面に柄を入れます。
4)仕上げ
専用の布で表面を磨き、完成です。
完成!
完成したリングはこちら!
ものづくり新聞 井上の感想:
シルバーのアクセサリー作りは初めての経験で最初は緊張もしましたが、森さんのサポートもあり、だんだん集中して緊張の中にも楽しい気持ちがでてきました。好きな文字を刻印できるということで「ESPOIR」(フランス語で希望)という言葉を選び挑戦しましたが、、、「S」を横向きに打ってしまって(笑) 森さんが『無限大のマークみたいでいいじゃないですか!』とフォローしてくださったのでそれも良い思い出になりました。そんなエピソードも含めて、自分だけのオリジナルな物を作る体験を通してものづくりの面白さに触れられたように思います。
やろうと思えばみんなできるんですね!
a.w.s 清澄白河店
東京都江東区白河2-4-14 武田ビル1F(深川資料館通り沿い)
店舗HP シルバーアクセサリー作りの体験工房 a.w.s 東京・清澄白河店
Instagram @kiyosumi_aws
編集後記
ものづくりって、人が出ると思います。その言葉に編集部メンバーはハッとさせられました。言葉ならいろいろ取り繕うこともできますが、ものづくりは取り繕えません。その人となりが正直に出るものなのかもしれません。
ものづくりを取材する私たちにとっては、その「人が出る」という部分をもっとフォーカスして取材できればと感じた取材でした。