ものづくりのワクワクを子どもたちに届けたい!「あまがさきエリア モノづくりパビリオン」潜入レポート
2024年01月24日 公開
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今回編集部が向かったのは兵庫県尼崎市。2023年12月8-9日に開催された、「あまがさきエリア モノづくりパビリオン」に行ってきました!
あまがさきエリア モノづくりパビリオンって?
![提供元:尼崎市](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/9ae571ea-3e7e-4068-9eab-d704be26581d/bf3e439448d4c3be75ea7c2a222abeed.png)
兵庫県尼崎市で開催されたこのイベントは、子どもも大人も、ゼロカーボンを目指す企業のものづくりの現場や、SDGs関連の取り組みを見て、楽しく学ぶことができるオープンファクトリーです。
このイベントを開催するきっかけとなったのは、今から10年以上前の2010年のこと。
「ECO未来都市・尼崎」宣言という、尼崎市と尼崎の産業界5団体が掲げた共同宣言です。
その5団体とは、尼崎商工会議所、尼崎経営者協会、協同組合尼崎工業会、財団法人尼崎地域・産業活性化機構、尼崎信用金庫のことで、これに尼崎市を加えた6つの連携体をAG6(エージーシックス)と呼称しています。
長らく阪神工業地帯の中核を担う工業都市として日本の産業界の発展に寄与してきた尼崎市。
これまでの経験を生かし、これからも先駆的な取り組みの第一線を走るため、「ECO未来都市」を目指し、それに向けて先駆的な環境・エネルギー技術の活用、導入など、尼崎発の独創的な新しいものづくりのスタイルを創出し、ものづくり産業の活性化を図っていくべきだと、AG6は考えています。(引用元:ECO未来都市・尼崎宣言文)
![提供元:尼崎市](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/9132ef6f-c009-478b-b08d-7ad3cdb264cd/de678bfeb4a676802087213580e90e6f.jpg)
チラシ中央にあるロゴは、実は様々なモチーフや意味が隠れています。
●(画像左から二番目)黒いラインは尼崎の「尼」、3R(リユース、リデュース、リサイクル)の「R」を表現●(画像左から三番目)ゼロカーボンの「0(ゼロ)」の形をリング状に表現●(画像一番左)モノづくりを連想させる「歯車」や「工場」を融合
今回、イベントの日程は12月上旬の金曜日と土曜日に選ばれました。これは、平日と休日で異なる来訪者にそれぞれ楽しんでもらうためです。
金曜日は主にゼロカーボンの取り組みを検討している企業の方を中心とした大人の参加者が多く、土曜日は家族連れや小中学生の子どもたちもたくさん参加していました。2日間で工場見学の雰囲気がガラリと変わり、驚いていた参加企業の方もいらっしゃいました。
このイベントのテーマの1つである、「ゼロカーボン」。すでにご存知の方もいるかとは思いますが、その意味をここで一度おさらいをしてみようと思います。
ゼロカーボンとは?
ゼロカーボンは、脱炭素やカーボンニュートラルとも言われる、ある建物の温室効果ガス排出量を、電力自給の創エネ、植林などという吸収量でまかない、実質排出量をゼロにするという取り組みです。世界でも「2050年までにカーボンニュートラルな世界を実現する」という目標を掲げ、その実現に向けた動きが生まれており、それと同様に、日本でも「カーボンニュートラル宣言」というものが2020年10月に宣言されました。このように、昨今は日本や世界という規模で、カーボンニュートラルな世界の実現が目指されています。
参考情報
尼崎市も2010年の共同宣言以降、環境省から脱炭素先行地域に選定されるなど、他の自治体のお手本となるような取り組みを先行して実施・計画しています。
尼崎市のSDGs関連の取り組み
尼崎市がECO未来都市を目指し、取り組んでいることのうち2つをご紹介します。
① 2025年開業予定!阪神タイガースのファーム球場「ゼロカーボンベースボールパーク」
![提供元:尼崎市](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/4a889f65-87c3-40e8-8d15-554d88212809/5ee5391d2f09ccabcce287bd10567314.jpg)
尼崎市、阪神タイガース、阪神電車が主体となり、2025年に環境に配慮した新しい球場ができます。阪神タイガースファームの本拠地が移転され、新拠点では太陽光パネルの導入やバイオマス製品の活用など、環境に配慮した取り組みのもと、球場が運営される予定です。
野球観戦という人気度の高いテーマにおけるゼロカーボンの取り組みは一気に認知が広がり、更なる新しい取り組みを生みそうです。ゼロカーボンを身近に感じられる、今までにない新しい球場の完成が楽しみです。
②SDGsに貢献するとポイントがもらえる電子地域通貨 「あま咲きコイン」
![提供元:尼崎市](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/1737aa90-3a67-48d9-a198-20729245058e/5268bb2806e6f7a025bcde8f1c4dc276.jpg)
いくつかの自治体がすでに作っている、その街でだけポイントが貯まったり、実際にお買い物に使うこともできる電子地域通貨。尼崎市の「あま咲きコイン」は、お買い物ができるだけではなく、SDGs関連の活動に参加するとポイントがもらえて、ポイントを対象のお店でのお買い物に使うことができます。
今回のモノづくりパビリオンへの参加もSDGs関連活動と認定され、実際に100名前後の来場者があま咲きコインでポイントをもらうことができました。
このイベントは、バスで巡る工場見学と、展示・ワークショップという、大きく分けて2つのエリアから成り立っています。2日間の開催で11の企業が参加し、およそ640人が来場しました。
記者が参加した工場見学は、いくつかあるコースの中から事前予約をした、土曜日の「北部エリア Aコース」というものです。このコースでは、株式会社ヤマシタワークス、有限会社中野製作所、山口電気工事株式会社の3つの企業の工場をバスで巡ることができました。時系列に沿って、ご紹介します。
🕙AM 9:50 阪神電車 尼崎駅北口の噴水前で待ち合わせ
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阪神電車尼崎駅の北口には中央公園があります。その公園の中にある噴水前が今回の工場見学ツアーのスタート地点です。休日ということもあり、ほとんどの方が家族連れでのご参加でした。この日の参加者は半分以上が子どもたちで、とても賑やかでした。
点呼のあとには、一人ずつトランシーバーを渡されました。工場内は騒音も大きく、説明が聞こえにくいこともあるためです。また、大人数の工場見学の際は、最後尾の人まで声が聞こえにくいこともよくあるので、大人数のツアーではトランシーバーがあると便利です。
いよいよバスに乗って、工場見学がスタートしました!バスは満員でスペースがあまりなかったのですが、そのおかげで移動中は車内で他の参加者の方たちと会話を楽しむことができました。
🕙AM 10:10 ヤマシタワークスで工場見学スタート!
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最初に向かったのはヤマシタワークスさんです。特徴的な研磨剤を使用した自社開発による鏡面加工装置、「AERO LAP(エアロラップ)」の製造、販売に加え、1000分の1ミリレベルで精密な部品や金型を製造しています。
AERO LAPとは、誰でも簡単に金属に鏡面加工を施すことができる装置です。大手スマートフォンメーカーの工場でも採用されているなど、様々な場面で活躍しています。ポイントは、契約前にお客様に実際に装置を触って使ってみてもらい、簡単に質の高い鏡面加工ができるということを確かめてもらっているということです。
元々研磨作業は従業員の体力や精神を消耗する、繊細で、かつ肉体的負担も大きい作業でした。その負担を減らし、かつ安定した質の研磨ができる装置としてこのAERO LAPが生まれました。
到着して、始めに常務取締役の山下徹也(やました てつや)さんから会社概要の説明を聞きました。
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山下さんは、子どもたちが内容を理解できるように、コーティングを「膜」、メンテナンスを「修理」、などとわかりやすい言い方で言い換えながら説明をしてくださいました。
工場見学当日の参加者に子どもが多いのを見て、その場で参加者に楽しんでもらえるよう、柔軟に対応されているのが印象的でした。
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工場の入り口には挨拶をしてくれるロボットが。AERO LAPと似たような見た目ですが、このロボットは人を感知して来場者に挨拶ができます。配布されたファイルには、オリジナルキャラクターであり広報担当の水月鏡夏(みなづき きょうか)さんが。あちこちに遊びごごろを感じ、ワクワクします!
![オリジナルキャラクターの水月鏡夏さん。展示会やイベントなどに登場します。(提供元:ヤマシタワークス)](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/4d92eb66-766c-4e71-881c-6bbb4ee7ebae/450fd4ddedd7d038a745bd5b0cbae55f.png)
工場見学中に一番盛り上がったのは、AERO LAPを使用した10円玉磨きのワークショップ。実際にAERO LAPを使用して10円玉がピカピカになるところを見せていただいたり、数名が10円玉磨きを体験したりしました。
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10円玉磨きのワークショップで驚いたのは、その「スピード感」と、使われていた「研磨剤のやわらかさ」です。
研磨剤とは金属や木材の表面を削り、小さな凹凸をなくし、なめらかで光沢のある状態に仕上げる際に使われるもの。用途や素材によって、様々な研磨剤を使い分けます。ヤスリや研磨シートの他にも、石鹸のような見た目の固形研磨剤、回転させる円盤の研磨ディスクなどがあります。頑固な汚れを落とす、クリーム状のクレンザーにも研磨剤が入っています。(研磨材の種類と選び方, モノタロウ)
表面がピカピカになるまで、要したのはたったの数秒でした。黒い研磨剤が勢いよく出てきた!と思ったら、あっという間に10円玉が姿を変え、ピカピカになっていました。
磨かれる前に10円玉の半分にはセロハンテープが貼られていたため、研磨されてピカピカになった部分は一目瞭然。新品のような輝きを放っています。
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その場で持っている他の10円玉と、この半分がピカピカになった10円玉を交換してもらっている親子がいました。子どもたちは、珍しい見た目の10円玉をお土産にすることができてとても嬉しそうでした。
黒い研磨剤には、ダイヤモンド粒子と17.5%の水分とコラーゲンが入っています。実際に触らせてもらうと、固そう、と思った予想とは裏腹に、ぷにぷにの感触に驚きました。例えるなら、陸上競技場のゴム製の床の破片のような弾力とやわらかさでした。
研磨剤にこのやわらかさを選んだのは、面を傷つけにくく表面を守りながら研磨をするためです。その結果、研磨された部品は研磨後も傷が少ない状態で、再利用されます。
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今後ヤマシタワークスさんは、子どもたち向けの体験施設やイベントの開催を自社単体でも積極的に行っていきたいそうです。10円磨きのワークショップの10円玉は、子どもにとっても身近なものであるため、楽しく工場見学ができた子どもたちが多かったようです。
ヤマシタワークス
AERO LAP
🕚AM 11:00 中野製作所
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次に向かったのは、主に樹脂加工技術で試作部品製造や量産部品製造を行っている中野製作所さんです。はじめに代表取締役の戸井昌弘(とい まさひろ)さんが、中野製作所の紹介動画を子どもたちに見せていました。
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動画は、中野製作所の事業内容を学びながら、尼崎城などを巡り、尼崎を観光した気分になれるような内容でした。ゲームのように仲間を増やしながら、尼崎を盛り上げようとする個性豊かなキャラクターたちがかわいいです。
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ちなみに画面に映るこのゆるキャラたちは、「尼崎嬢ちゃん」「尼崎ジョーくん」「ウジカネクン」といって、中野製作所の公式ゆるキャラです。
キャラクターや団体のロゴなどのアクリルキーホルダーも製作されているようです。ゆるキャラの素朴な表情にほっこりします。
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こういったオリジナルキャラクターや企業のロゴなどのキーホルダーの依頼もあるそうです。他社では製作を断られてしまうような、100前後の小ロットも受け付けており、主にイベントの際の記念品やノベルティの製作時に活用されています。
![子どもたちがわかりやすいように、身近なものを使って説明をする戸井さん。自社で容器を製造し、ラムネを製造する岸田商事が販売しているお菓子「あまらむね」をプレゼントして、子供たちの心をつかむのも忘れません!](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/9b00d638-5242-4e1f-aa2c-d9a8a5d5d54f/4d079066f56f6a56d712ebb3ea59dfcd.jpg)
「小ロットで何かを作りたい人を応援したい。100でも50でも、他社ではロット数で断られてしまうような依頼をぜひ、うちで請け負いたい」そう話す戸井さんは、これまで依頼を受けて製作したものも見せてくださいました。尼崎といえば、尼崎城や阪神タイガース。それらの記念品やノベルティを小ロットで製作することもあるそうです。
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子どもが描いたイラストを残しておきたいという願いを叶える、アクリルキーホルダーの製作も行っています。
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また、中野製作所の社員は、担当や部署に関わらず、許可さえ取れば工場の材料や設備を自由に使うことができるそうです。形にしてみたいアイデアが生まれた社員は、それをすぐに形にしてみることができるのです。
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工場見学の際も作図ツールを気軽に子どもたちが触っていて、その隣で使い方を説明しているフレンドリーな社員の皆さんが印象的でした。
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よく見ると額には「オープンファクトリー」の文字が。「顔の色んな部位に簡単にツノを生やすことができるんだよ」という説明に、子どもも大人も興味津々。
これを見て、子どもたちは顔に穴を開けて遊んでいました(笑)。
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社員の皆さんはこういったツールを用いて、デスク周りのペン立てなどの雑貨や、名刺のデザインも一人一人手作りされています。日々使うものに自分らしさを表現できるのは従業員のモチベーションにも繋がりそうです。
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次に、新しい試みとして始めたオリジナルブランド、ToyCraft (トイクラフト)の商品を紹介してくださいました。その中でも印象的だったものを2つご紹介します。
![提供元:中野製作所](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/a395db42-e6aa-4a93-92e4-bbb872f85fd3/f6290ad63114fd44d1389d833874280b.png)
1つ目は、金具が取れてしまったチャックを生き返らせることができる「ToyChuck (トイチャック)」です。
![提供元:中野製作所](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/d22f04a0-349c-48de-954e-e0d8df9e1c41/1977957aa3961d2f19574effae45f434.png)
このトイチャックは、チャックが壊れてしまうとそのかばん本体も使えなくなってしまうという問題を解決してくれます。チャックの引き手部分にチャームを取り付けることで、壊れてしまったチャックを復活させることができます。
かばんなどのチャックがついたものをもう一度使うことができるだけではなく、その本体にユーモアや個性も付け加えてくれます。
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食品サンプルメーカーとの共創で生まれたおにぎりや、花粉症であり風邪ではないことをアピールできるものから、木製のドクロまで、個性豊かなチャームが並びます。展示ブースでは、「この手前の花粉症のやつ、便利で良いよね!」という声が多かったのだとか。
2つ目はToyCraftの隠れた名品、「できる男シリーズ」です。「できる男は、ちょっとした小物も上質でいいものを使っているはず」と、できる男の仕事風景や、使っているデスク周りの小物を想像しながらできた商品がこちら。
![提供元:中野製作所](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/91428978-1175-4231-818e-074accf1aae9/70f8075346f826e3772eb45cf82b6929.png)
できる男シリーズというキャッチーな名前に惹かれます。企画と製作をされている折田康輔(おりた こうすけ)さんに「女性の私も使っても問題ないですか?」と聞くと、笑顔で「もちろんです!」と答えてくださいました。
木材はギターなどを製作している木工屋の端材を活用し、高級で上質な木材からこれらの商品が生まれています。
![提供元:中野製作所](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/wraptas-prod/monoshin/81b9635a-d663-4c49-81ae-c849b5435dc2/b81e1d3779cbbcc05d5517afa07a2db2.png)
周辺地域の個人飲食店に密かに人気なのは、木製トレーです。木製トレーの中に樹脂でロゴなどを埋め込むこともできます。初めは開発費がかかり完成までに時間も要しますが、その後新しくトレーが必要になった場合は、追加注文後すぐに製作し届けることができるそうです。
自社が得意とする樹脂と、偶然出会った高級木材。木材と樹脂という面白い組み合わせの自社製品が今後も生まれるかもしれません。また、木工屋さんなどが普段は廃棄してしまうような端材の活用をサポートしたいという思いもあります。
自社のイベントも開催してきた中野製作所。これまでに計5回開催されてきた「トイクラフトの日」という地元の子ども向けのものづくり体験イベントを今後も継続して行うそうです。個性的でユーモアのあるToyCraftの新商品の登場が楽しみです。
中野製作所
ToyCraft
🕛PM 12:00 山口電気工事(AtomsWorldグループ)
最後に向かったのは、AtomsWorldグループの2021年にできたばかりのオフィスです。
このグループ会社のうちの一つである山口電気工事は、主に発電所や変電所における電力設備工事によって発電された電力を一般の家や建物で使える電力に変えたり、太陽光発電設備の設計・施工などを行っている会社です。
オフィスが入っているこの建物は「ZEB(ゼブ)」と呼ばれており、高効率な設備システムで消費エネルギーを節約しながら、太陽光発電などにより建物内で使用する電力を自給することが可能です。「省エネ」と「創エネ」を同時に行えるため環境に優しく、これまで200名以上の企業関係者、自治体関係者、学生などが見学に訪れるなど、まだあまり先例のない取り組みとして注目を集めています。
ZEBは、Zero Energy Building(又はネット ゼロ エネルギー ビル)の略称です。この建物の定義は、寒くても暖房をつけるのを我慢したり、設定温度内で電気代を節約しようとせずに、無理をしない快適な温度環境であることが前提です。そしてその上で、使用した電力を全て建物内の発電箇所で発電している、いわば電力を自給しているビルをZEBと呼びます。
他にも、ZEBを目指した小規模の取り組みとしてこのような別称もあります。省エネと創エネの割合によって名前が異なります。
・ZEB oriented (ゼブ オリエンテッド)
・ZEB ready (ゼブ レディ)
・Nearly ZEB (ニアリー ゼブ)
それでは実際にZEBを見学してみましょう。
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外観はコンクリート調のかっこいい印象でしたが、入ってみると中は開放的で木の温もりを感じる、居心地の良い建物です。
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円形のデスクの中央にはサボテンなどの植物が植えられていて、とてもかわいいです。リラックスして作業も捗りそうですし、自然と植物がきっかけで会話も生まれそうです。
このワークスペースはフリースペースとなっていて、仕事道具を収納ケースに入れて、毎日違う場所に座って作業をすることができます。
AtomsWorldグループの全ての企業の人が使用できるため、自然と誰とでも挨拶をしたり、交流ができるようになっているのです。
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実際にこの建物には、いくつか創エネと省エネを効率よく行うための秘密が隠されています。
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まずはこの開放的で大きな窓。四方に大きな窓があるため、日中は太陽光が入り込み、照明をつける必要がほとんどないそうです。
次に、天井についている四角い天窓に大きな円形の白いカバーにより、太陽光を最大限部屋に取り込むことができます。
そして、窓は三重から四重になっています。気密性がいいので、結露は全くないんだとか。この気密性のおかげで寒い日も暖房の出番が少なくなります。
さらに、天井についている127枚のソーラーパネルにより、創エネを実現しています。
今後、ZEBの機能を持った建築物は導入の義務化の動きもあり、これから新規で建物が建つ際の新しいスタンダードになりそうです。無理をして電力を使わないのではなく、快適空間でありながらその場で電力を生み出すことで排出量を相殺するという動きならば、ゆっくりと広い層に受け入れられていきそうだと思いました。
山口電気工事
AtomsWorld
ZEB
🕐PM 1:25 尼崎駅周辺で解散。希望者は徒歩で商工会議所ビルへ移動
どの企業も時間内で工場見学や質疑応答ができないほど盛り上がっていました。予定より少し遅れましたが、無事バスは尼崎駅周辺に戻ってきました。そして尼崎駅から徒歩5分ほどのところに、商工会議所ビルがあります。このビルの7階へ、展示・ワークショップの見学に向かいました。
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参加企業から好評だったのは、「ブースのお手伝いをしたい!と志願した大学生のスタッフと一緒に展示ブースに立つ」という企画。多くの学生が真面目に企業の事業内容や歴史を事前に学び、積極的に来場者への説明をしている光景が印象的でした。そのように自社を学び、発信してくれる若者を前に胸が熱くなった参加企業も多かったようです。
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いくつかの展示ブースとワークショップを回ったあと、こんなものを見つけました。
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一日の見学や体験を通して、子どもたちがチャレンジしたいと思ったことをツリーに貼れるようになっています。
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子どもたちはそれぞれの受け取り方で、ものづくりの現場やゼロカーボンに向けた取り組みと出会い、それぞれの思いをこのカードを書いたようです。この日の学びが、その後の日常生活のどこかで生かされているのかもしれません。
編集後記
全体を通して、子どもと大人、来訪者と出展企業の垣根をあまり感じない、フレンドリーな雰囲気のあるイベントでした。地球温暖化のメカニズムや対策方法を、大人よりもハキハキと発言している学生もおり、その場にいた大人たちは拍手をしながら圧倒されていました。また企業側からは、こういったゼロカーボンの取り組みと同様に、工場の機械の動きや、何を作っているのかは、子どもたちにどんな説明なら通じるだろうか?と悩む方もおられました。言葉での説明ももちろん大事ですが、まずは子どもたちに見せたり、触らせたりして五感でまずは楽しく体験してもらう、そしてキャラクターや動画などを活用して興味を持ってもらうというのがその先につながる第一歩になると思います。子どもの頃のワクワクした体験や、真新しいものと出会った時の日のことは、大人になってもふとしたときに頭によみがえってくるものです。今回、子どもたちが得た発見やワクワクが数年後に実を結び、次の世代から新しいアクションが生まれるのが楽しみです。
( ものづくり新聞記者 佐藤日向子 )