製造業で働く人の手を守るハンドクリーム『びるふれ』誕生秘話

 
開発したハンドクリーム『びるふれ』と開発者の黒澤凜花さん
開発したハンドクリーム『びるふれ』と開発者の黒澤凜花さん
 
 
回転軸の部品「シャフト」を製造・販売している株式会社YSK(大阪府八尾市)は、製造業就業者向けのハンドクリーム『びるふれ』を自社開発しました。このハンドクリームは、製造業でよくある、「切削油の付着による肌荒れ」を防ぐ保護クリームで、工場で働くスタッフが作業中でも使えるように作られました。
YSK工場内での作業風景(ものづくり新聞編集部撮影)
YSK工場内での作業風景(ものづくり新聞編集部撮影)
 
『びるふれ』は、YSKに新卒で入社された黒澤 凜花(くろさわ りんか)さんが中心となって開発されました。シャフトの製造と全くジャンルが違うハンドクリームをどうして作ろうと思ったのか、この製品が生まれた背景にどんなストーリーがあるのか、ものづくり新聞が取材しました。
 
株式会社YSKは「シャフト王国」を掲げ、1966年に設立されたシャフトメーカーです。現在は国内に5つ、海外に2つ拠点があります。ものづくり新聞は2022年にもYSKさんを取材し、製造部本社製造課課長代理の石川 大翼さんにお話を伺いました。(その時の記事はこちらです)今回はびるふれの商品開発を2年前の入社当時から担当されている、経営企画課の黒澤 凜花さんにお話を伺いました。
 

“製造業で働く人の困りごと” を自分たちで解決したい

 
ーー製造業向けのハンドクリームは、他のハンドクリームとどんな違いがあるのですか?
 
手の感覚を研ぎ澄まさないといけないような細かい作業は素手で行うことがあるのですが、その場合、「切削油」というものが手に付いてしまって、これを放って置くと手が荒れてしまうんです。
 
例えば料理をしているとき、ギトギトした油が手に付くと、洗っても手に残っている感じがしますよね。ああいった感じになりにくくするために、シリコン成分で肌をコーティングし、工業油から手を守ってくれるハンドクリームになっています。
 

『びるふれ』という名前の由来

 
ハンドクリーム『びるふれ』 https://virfra.com/  (『びるふれ』公式サイトより)
ハンドクリーム『びるふれ』 https://virfra.com/ (『びるふれ』公式サイトより)
 
ーー商品名の『びるふれ』ですが、なかなか聞き慣れない言葉ですよね。どういった由来があるのですか?
 
これは実は私の名前(凜花)をドイツ語で書いたものが元になっています。『びるふれ (vir Fortis Fragrantia)』はドイツ語で凛々しい花という意味があります。
 
商品が出来上がってきて、名前をどうしようかという話になった時に、「作った人の名前でいいんじゃない?」という話が挙がって、ちょっと恥ずかしいなとも思ったのですが、ドイツ語であればいいかなと思い、『びるふれ(virfra)』に決定しました。
 

大手他社ではなく、YSKへの新卒入社を選んだ理由

 
 
 
ーー黒澤さんはYSKに入社されてから何年目ですか?
 
2年前に新卒で入社して、現在3年目です。大学時代は大手ハウスメーカーからも内定を頂いていたのですが、入社後の自分の人生も最初から想像ができてしまっていました
 
ーーそういった中、んな経緯でYSKに入社されたのですか?
 
就職について悩んでいたときに知り合いを通じてYSKをり、それをきっかけに興味が湧いてYSKの企業説明会に行きました。お話を聞いてみて、製造業という軸がありながら、いろんなことに挑戦しようとしている姿勢に魅力を感じました。直感で、ここで働く未来の方が面白そうだと思い、入社を決めました。
 
 

「製造業に関係なくていいから何か新しいことをやってみて」から始まった自社製品作り

 
 
 
 
ーー入社後はどんなお仕事をされたのですか?
 
あまり馴染みのない業界で、やっていけるのか不安に思っていた中、新入社員の研修の延長のような感じで、「鉄に関係する商材でなくてもいいから何か役に立ちそうなものを考えてみて」と言われました。
 
ーー実際にどういった方法で取り組まれたのですか?
 
まずは業界の悩みを知るところから始めました。ネット検索からはじまり、次に現場でのヒアリングを行いました。そこから「製造業の手荒れ」に着目し、関連する困りごとを集め、企画に反映させました。
 
ハンドクリームは、複数個考えた企画の一つだったのですが、社内でも評判が良く、「それあったら欲しいよね!」という声が上がったこともあって、本格的な商品開発に踏み切ることになりました。
 

町工場をもっと働きやすく、安心して長くいられる場所へ

YSK工業現場の様子(ものづくり新聞編集部撮影)
YSK工業現場の様子(ものづくり新聞編集部撮影)
大手他社への入社を辞め、新卒で入社を決意された黒澤さんのお話から、YSKが持つ、“入社1年目から挑戦や成長の機会がある” という、若い世代を惹きつける強い魅力を感じます。
 
どの業界にも、働く人だからこそ共感できる困りごとや、あったらいいなというものがあるのではないでしょうか?こういった、メインの事業とは異なる分野でありながら労働環境改善のために挑戦するというのは、素晴らしい取り組みであると思います。また、ものづくり新聞としても、今後積極的に取材していきたい事柄であるとあらためて感じました。
 
商品が気になる方は、『びるふれ』の商品サイトをご覧ください。
『びるふれ』https://virfra.com/
 
( ものづくり新聞特派員 佐藤日向子/Hinako Sato )
 
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