【現役高校生に聞く!】今、どんなことが好き?ものづくりってどんなイメージ?

ものづくり企業が直面する深刻な課題のひとつに「若手の人材採用」があります。
会社を継続させるために必要なのはもちろんのこと、組織としての力を強化するためにも、様々な世代の人材採用は重要です。この記事は、人材採用を目指している企業の中でも、特に“新卒者の採用”考えている方にお届けします。
 
今回は、山形県西村山郡河北町(かほくちょう)にある、山形県立谷地(やち)高等学校の普通科に通う高校2年生(2023年2月現在)、菅野 晴菜さん、設楽 大樹さん、奥山 花さんにインタビューさせていただきました。
 
今の10代は一体どんなことを考えている?
将来どんな仕事に憧れている?
ものづくりの仕事って、どう思う?
“気になるけれど、答えを聞く機会がない”そんな疑問をお持ちの方に、是非読んでいただきたいと思います。
 
もしかすると、あなたのイメージしている10代の姿と、実際は違うかもしれません。等身大の姿をお伝えすることで、採用や教育の役に立つことができたら嬉しいです。
 
インタビューは、地元の酒蔵で日本酒の仕込み体験に参加した後に行いました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。 “地元を語れる子供を育みたい” 高校生と挑む酒造り(山形県河北町)

生徒会活動に邁進中の3人

ーーみなさんは生徒会に所属されているんですよね。生徒会の雰囲気はどうですか?
 
晴菜:仲が良くて、話しやすい人が集まっているなと思います。
 
大樹:「〇〇長」などの役職があると、生徒会の中で上下関係が生まれ、良いアイデアが出にくくなるんじゃないかと考えて、役職をなくしました。谷地高の生徒会は、みんなで作り上げていく雰囲気があります。
 
奥山 花さん
奥山 花さん
ーー生徒会に入って活動してみて、いかがですか?
 
:生徒会に参加するまで、こういった活動に挑戦したことはありませんでした。でも心の中でやってみたいという気持ちがあり、勇気を出して参加して良かったなと思っています。自分たちで生徒会活動を企画して、実行できるのがすごく楽しいです。
 
大樹:部活動で大きな大会に参加する時に、すごく緊張するタイプで、それを克服したいと思っていました。生徒会で企画を立てて、実行する時も同じように緊張する瞬間があるのですが、それがとても良い訓練になっていると思います。今のうちにどんどん挑戦して、緊張する場面に慣れたいと思っています。
 
晴菜:以前、保護者の方々をお招きして、話を伺う機会がありました。中でも、”大人から見た「谷地高のイメージ」”を教えてもらったことが印象に残っています。「そう思われているんだ」と意外に思うこともあり、とても勉強になりました。自分たち以外の新たな視点からの意見をもらえて、とても楽しかったのを覚えています。
 

現役高校生の今ハマっていることとは?

設楽 大樹さん
設楽 大樹さん
ーーみなさんの好きなことや、趣味を教えてください。
 
大樹:カヌー部に所属していて、毎日のように練習やトレーニングで忙しくしています。趣味は音楽を聴くことです。最近はロックをよく聴いていて、中でも「UVERworld」の音楽が大好きです。
 
晴菜:私は弓道部に所属しています。漫画やアニメが好きで、ちょっと子供っぽいんですが、『忍たま乱太郎』が最近のマイブームです。家に漫画がたくさんあったこともあり、今でも印刷された紙製の漫画が好きです。この前、古本屋で全巻まとめ買いしたら、「買いすぎなんじゃないか!?」と父に言われ、最近は大好きな古本屋に行けずにいます(笑)
 
:部活は家庭部です。今好きなことは、海外ドラマ・映画を見ることです。休みの日にたまたま見始めたらハマって、Netflixで配信しているウェンズデーという作品や、韓国ドラマなどを見ています。
 
菅野 晴菜さん
菅野 晴菜さん
ーー学校帰りに友達と遊んだり、どこかに行ったりすることはありますか?
 
晴菜:最近、コンビニのプリンタを使って、アニメや漫画のブロマイドが印刷できる「ネットプリント」を利用しています。好きなアニメのイラストを選んで、その場で印刷できるというものです。学校帰りに友達と一緒にコンビニまで歩きながら、その日の出来事をおしゃべりするのも楽しいです。
 
大樹:僕は、平日はカヌー部の練習があって、あまり遊びに行けないんです。最近、休みの日はボーリングして、映画を見て、カラオケをするというのがマイブームです。
 
ーー放課後にカフェや喫茶店に行くことはありますか?
 
大樹:この辺は、カフェ自体があんまりないんですよね(笑)
 
晴菜:多くはないけど、あるよ!(笑)新しいお店ができたら、「ここ行こうよ〜」と友達と話しています!
 
 

現役高校生がイメージする“ものづくり”って?

ーーここからは、ものづくりについてお伺いしたいと思います。普段の生活の中で、ものづくりに触れた経験はありますか?
 
晴菜:中学生の頃、母が「レジン(合成樹脂)」を使った小物作りをしていました。それを見て私もやってみたくなり、休日に母と100円ショップに材料を買いに行き、家でキーホルダーなどを作っていました。
レジンアート(イメージ画像)
レジンアート(イメージ画像)
 
ーーどんなキーホルダーを作っていたのですか?
 
晴菜:色々なものを作りました。例えば、キャンディー型のキーホルダーを作る時は、色を何種類か入れて、グラデーションになるように工夫したり、中にパーツを入れて動きが出るようにしたりしました。でも、高校生になってからは忙しくてできていません。
 
ーー花さんはどうですか?
 
:最近はネイルチップを作ることにハマっています。チップにジェルネイルを塗ったり、パーツを付けたりして楽しんでいます。
 
ネイルチップ(イメージ画像)
ネイルチップ(イメージ画像)
ーーネイルチップですか!休みの日に付けているのですか?
 
:そうです。最初、通販サイトでネイルチップを購入したのですが、商品によってはチップが薄くて、自爪が透けて見えてしまったんです。それがなんかダサいなーと思っていた時に、TikTokで「通販や100円ショップのパーツで簡単に作れるネイルチップ」の紹介動画を見つけました。簡単ならやっちゃおうかなと思って、やり始めたら楽しくてハマりました。100円ショップのネイル商品が結構充実していて、簡単にできるんです。
 
 
ーー大樹さんはどうですか?
 
大樹:中学生の頃、縫製の仕事をしているおばあちゃんから教わって、ぬいぐるみを作ったり、マフラーを編んだりしていました。縫い物の最後の仕上げは難しくてわかりませんが、一般的な編み方なら今でもわかります。
 
ーーみなさんものづくりのご経験はあるのですね。では、製造業・ものづくり企業というとどんなイメージを持っていますか?
 
大樹:今放送している、朝ドラ『舞い上がれ!』の影響もあって、小さいネジなどの部品をたくさん作っているイメージがあります。
 
晴菜:私は、中学生の頃の職場体験で、当時母が勤めていた山形県西川町の「自然と匠の伝承館」に行きました。その時に「メノウ」という石を、削って加工する体験をしました。その時のイメージがあるので、細かい手作業をしているというイメージがあります。
 
:私もドラマのイメージが強くて、「ものづくり」と聞くと、『陸王』というドラマで靴を作っているシーンを思い出します。
 
ーー身近に、製造業・ものづくり企業で働いている方はいますか?
 
大樹:お父さんが製造業に勤めていて、お兄ちゃんが車の整備士をしています。お兄ちゃんは私服に着替えて帰ってきますが、お父さんは作業着で帰ってくるので、服についた工場の独特なにおいも印象にあります。
 
ーーそうなんですね。花さんはどうですか?
 
:お母さんがハンドメイド作家をしています。あまり詳しくはわからないのですが、文字を入れ込む機械などを使って、オリジナルの金属製の指輪を作っています。
 
ーー晴菜さんはどうですか?
 
晴菜:私は身近にはいません。唯一いるとしたら、友達のお母さんが、スポンジなどを使ってケーキのような小物を作って販売していると聞いたことがあるくらいです。
 
 

高校生が描く、未来の自分

ーーみなさんは将来、どんな仕事をしてみたいと考えていますか?職業ではなくても、こんな風に仕事してみたいというイメージがあれば教えてください。
 
晴菜:正直に言っちゃうと、お金をいっぱい稼ぎたいなって思います。それと、どちらかというと私は、女性らしい格好より、カッコいい服装が好きなので、できるなら私服でできるような仕事がいいかなと思います。
 
ーーお金のことは大事ですよね。将来、自分がどんな風に仕事をしているかのイメージは湧きますか?
 
晴菜:パソコンを使ってバリバリ仕事をするイメージはありますが、私はあまりパソコンが得意じゃないんですよね・・・。あとは、決まった人と決まった範囲の中で仕事をするというより、色々な人と繋がりながら、計画を立てて仕事を進めていくというスタイルに憧れます。
 
ーーいつか、山形県を出て仕事をしてみたいという思いはありますか?
 
晴菜:あります。兄が東京にいるんですが、大変なことがあっても楽しく働いていていいなぁと思います。母からも、「色々な人と関わって、いろんなものを見た方がいい」と言われたので、山形県を出て仕事をすることも考えています。
 
 
ーー大樹さんはどうですか?
 
大樹:僕は一級建築士を目指しています。何かを作るのが好きなので、依頼人に寄り添ったものづくりをしてみたいと思っています。昔、ひいじいちゃんが宮大工をしていて、色々な建物作りに貢献してきたことも影響していると思います。
 
ーー花さんはどうですか?
 
:私は小学校の先生になりたいです。一番楽しかった思い出があるのが小学校で、先生になって子供たちと触れ合うことにも興味があります。タイプとしてはデスクワークでバリバリ働くのは、私にはあまり合っていないのかなと感じています。
 
 

ものづくり企業ってどんなイメージ?

高校生と近い年代の特派員村山(大学2年生※2023年1月取材時)も話に加わりました。
高校生と近い年代の特派員村山(大学2年生※2023年1月取材時)も話に加わりました。
 
ーーもし、みなさんが製造業やものづくり企業で働くとなった場合、どうでしょうか?不安に思う点や、やってみたいことなどはありますか?
 
晴菜:製造やものづくりというと、機械や道具を使う作業があるのではないかと思います。さっきお話した、「メノウ」加工体験でも、大きな刃物を使って石を掘りました。ものづくりに道具や機械は不可欠だと思いますが、ちょっと危なそうなイメージがあります。なんか、怪我に繋がっちゃいそうな・・・。
 
ーーなるほど。自分にもできそうというイメージはあまりないですか?
 
晴菜:正直、できそうな感じはしないですが、やってみたいなとは思います。その人にしかできない職人技はカッコいいと思うし、できるなら自分もやってみたいです。でも、ずっと修行して頑張っても、生活していけるだけの仕事になるのかがわからないので、そこは不安ですね。
 
:私も、ものづくりはセンスがある人しかできないイメージがあり、何年も弟子入りしてやっとなれる世界なんじゃないかと思います。大きな工場だったら、たくさんの方が並んで、ライン作業をしているイメージがあります。
 
大樹:僕も同じような印象を持っています。他にどんな仕事があるか今はわからないので、製造業というとたくさんの人が並んで仕事をしているイメージがあるのですが、この先もっと技術が発展していったら、ロボットに仕事を取られてしまうんじゃないかという心配も少しあります。
 
 

カッコいい作業着だったら・・・いいかも!

取材の日は、地元の酒造メーカーで酒の仕込み体験が行われました。詳しいレポートはこちらから。
取材の日は、地元の酒造メーカーで酒の仕込み体験が行われました。詳しいレポートはこちらから。
ーー「製造業がこんな感じなら、若い人が働きたくなるかも!」と思う点はありますか?
 
晴菜:酒造りでいうと、より甘くしたり辛くしたり、味の研究が面白そうだと感じたので、自分で考えたことを形にすることができる環境ったらいいなと思います。
 
ーー自分で考えた商品を形にしようと、オリジナルの自社製品を開発・販売に挑戦する製造業が増えています。それはどう感じますか?
 
大樹:うーん。僕の場合、「このメーカーって、〇〇を作っている会社だよね」というイメージが強いので、欲しいものがあった時は、やっぱりその商品を専門に作っている大手メーカーさんの商品を選ぶことが多いです。
 
ーー例えば、ものづくり企業が、“大手メーカーにはない機能が備えられている商品”を開発し、販売している場合は、どう感じますか?
 
大樹:ちょっと魅力的にも感じますが、その機能がある分耐久性が落ちてしまうのではないかと考えてしまいます。
 
ーーなるほど。他にはありますか?
 
晴菜:あとは、酒蔵の白い制服や、エプロン姿はすごくカッコいいなと思いました。でも、もしあの服を女性が着たら、ちょっと給食のおばちゃんみたいになっちゃうのかなと・・・。誰が着てもカッコいい雰囲気になる制服はやっぱり魅力的だなと思います。
 

酒の仕込みを体験し、感じたこと

日本酒の仕込み体験では、洗米作業や、蒸した米をタンクに入れて醪(もろみ)を仕込む作業を体験しました。詳しくは以下の記事をご覧ください。
ーー実際に酒の仕込み体験をしてみていかがでしたか?
 
晴菜:運んだり、かき混ぜたりと手作業の仕事が多くて、すごく手間がかかっているなと感じました。たくさんの工程がありましたが、少人数でやっているところも驚きました。
 
:酵母を培養するときや、味の研究をする時に、ビーカーや試験管などを使っていると教えてもらいました。その光景が研究室のようで、面白そうだなと感じました。想像していた製造業とは少し違っていたので、イメージとは少し違う面がわかると興味が湧きます
 
大樹:日本酒が完成したあとは、製造工程でできた酒粕の活用方法も考えたいと思っています。まだアイデアを出している段階ですが、食べ物ではなく化粧品などにも活用できるのではないかと生徒会のメンバーで相談しているところです。
 
ーー日本酒の完成が楽しみですね!
 
 

あとがき

 
取材をしていると、若手の採用を目指しているというお話を伺うことがあります。採用に向けて実際に動いている企業の方からは、こんなことで苦労しているというお話もお聞きします。そのような取材をしていくうちに、「企業側が採用したいと思っている学生や若手の人って、どんなことを考えているのだろう?」という疑問を持ちました。
 
ものづくり新聞として、製造業に入社した若い世代の方にインタビューすることもありますが、それ以前の、“将来、どんな仕事をしようか考えている方々”、つまり学生の方々に話を聞いてみたくなりました。学生のみなさんに「ものづくりや製造業の世界においでよ!」という前に、学生のみなさんがどんなことを考えているのか、製造業はどんなふうに見えているのか、それを知る必要があると感じたのです。
 
私は高校を卒業して10年ほど経ち、現役高校生の言葉を聞く機会はほとんどありません。自分が高校生だった時のことも少しずつ薄れている中、高校生の言葉を聞くことができたのは、大変貴重な経験でした。読者のみなさまには、現役高校生が持つ素直な思いや考えを感じていただき、“若い世代のことを知るきっかけ“のひとつとして、少しでも役に立つことができれば嬉しいです。
 
お話を聞かせていただいた晴菜さん、大樹さん、花さん、そして谷地高等学校の堀米校長先生、佐藤先生、快く取材を受けてくださり、ありがとうございました。(ものづくり新聞 記者 中野涼奈)