中小ものづくり企業にブランディングは必要?
Twitterの書き込みで「新規事業への挑戦に大反対するベテランの方にブランディングの価値を伝えるコツ」というものがありました。
ブランディングを直接金銭的価値に定量的に置き換えて考えることはおそらく難しいことなので、別のアプローチから価値を考えてみましょう。
どんなアプローチなのでしょうか、くわしく見ていきましょう。
経済産業省は主力事業の製品ライフサイクルを調べています。つまり主要製品が売れている期間(経済的寿命)のことで、同じ製品が販売できる期間がどのくらいあるかということです。たとえばある輸送用機械(自動車、トラックなど)の新型モデルを販売開始したとすると、おおよそ半分の輸送用機械のライフサイクルは5年以内だということになります。
さらに、その製品ライフサイクルが10年前と比べて短くなっているか長くなっているかという質問に対しては、以下の図のとおり長くなっているという会社は非常に少なく、平均20-30%の会社が製品ライフサイクルが短くなったと答えています。電気機械の数値が大きくなっているのは家電製品やPC・スマホ関連機器がこのカテゴリに含まれるためだと思われます。
しかし、これは困ります。せっかく新製品を出したとしてもその製品ライフサイクルがどんどん短くなってしまっているのです。そうすると新製品を短期間で出していかなければならず、開発投資や新規投資が必要になってしまいます。できれば同じ製品を長い間販売できたほうが利益に結びつきます。
では、どうして製品ライフサイクルは短くなってしまうのでしょうか?
「顧客や市場のニーズや変化が速い」「技術革新のスピードが速い」の2つが圧倒的に多く、その次に「業界が過当競争に陥っている」という回答となっています。
そうすると、「もっとスピードを早くしなければ」「ニーズに応えられるようにしなければ」という解決策を求めたくなります。実際そのような取り組みは重要です。しかしものづくり白書のアンケートは「製品ライフサイクルタイム確保の取組」を聞いていますので、どうすればライフサイクルを短くしないようにできるか、という質問です。
その結果、1位は「価格競争に陥らない事業領域へのシフト」と事業そのもののシフトが多くなっています。2位と3位は「ブランド戦略・差異化戦略」「マーケティングの強化」という回答になっています。とくに大企業にその傾向が強く、中小企業は比較的低い数値となっています。
これらの調査結果から、ものづくり白書は以下のように締めくくっています。
利益を出すことが大前提である企業にとって、技術が優れているだけでは製品が売れない今、ユーザーに価値を理解してもらえるような明確なソリューションにつなげることが重要であろう。
また、製品のライフサイクルを最適化、長期化することで生み出した利益を、次の投資やマーケティングの強化へ活用する好循環化のサイクルを生み出すことが求められている。
Twitterの書き込みへのお答えとしては、「ブランディングは製品のライフサイクルを最適化することに役立ち、その結果利益が増え、次の投資に活用できる」ということになりそうです。
さて、ものづくり新聞は江戸切子の伝統工芸士でありながらもマーケティング活動を積極的に進め、自分自身のブランディングに力を入れているキヨヒデガラス工房の清水秀高さんにインタビューしています。「利益を出すことが大前提である企業」とは対照的ですが、
江戸切子を広めるため、売上を伸ばすために情報収集していますが、未だに”職人は利益度外視していいもの作れ”、”職人は利益に走るとよくない”というイメージがあるんですよ。
と話す清水さん。自分自身のブランドをアピールすることで利益率の高い自社商品を販売し、次の投資に結びつけていこうとする清水さんのインタビューもぜひご覧ください。
この課題について、実際に取り組まれていることやお考えがありましたら、コメントでお寄せいただければと思います。実際の現場の皆さまからのお話を、ぜひ伺いたいと思います!
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