「OSEBAはファンづくりの集大成」。ボタンへの熱意が生んだ「押せる」テーマ空間、その舞台裏 /島田電機製作所
2024年12月12日 公開
「ボタンを知り、ボタンの魅力に触れる」をテーマに、日本全国あらゆる種類のボタンを探し求めていく企画、シリーズ「ボタン」。記念すべき第1回は、株式会社三和電子さんに「ゲームボタン」の特徴や制作秘話を伺いました。第2回となる今回は、押せるテーマ空間「OSEBA」で現在話題沸騰中のあの会社!そう、島田電機製作所さんにお話を伺います!
「1000のボタン」をはじめとするボタンの数々はもちろん、ユニークな社風から生まれる自由な発想と情熱、「島田人」と称されるスタッフの方々の個性にも注目です!
■「事業活動はファンづくり」。ユニークな社風に宿るコミュ力
まずは、島田電機製作所さん(以下、島田電機)がどのような企業で、どんな人たちが働いているのか、島田電機 代表取締役の島田正孝(しまだ まさたか)さん、島田電機 企画部の小倉心愛(おぐら こころ)さんにお話を伺ってみましょう。
【お話を伺った人】
島田人No.001 島田 正孝(しまだ まさたか)
島田電機製作所代表取締役社長。「島田カルチャー」をはじめとする数々のアイディアで会社を牽引する、島田電機の総合プロデューサー。島田電機イチの島田電機ファンを自負している。やる気フレーズは「自分らしく挑戦!!」。
【お話を伺った人】
島田人No.002 小倉 心愛(おぐら こころ)
企画部総務グループ、企画チーム主任。広報活動のエキスパートであり、島田人(島田電機製作所で働く人)の全力サポーター。「OSEBA」内にある「333ボタン早押しチャレンジ」の世界チャンピオンでもある。やる気フレーズは「大盛り無料」。
――現在、ボタンのテーマ空間「OSEBA」が大人気の島田電機ですが、普段はどのようなものを製作されているのでしょうか?
小倉さん:「はい。当社は1933年の創業以来、エレベーターの押しボタンや、エレベーターが到着したことを知らせる到着灯などをオーダーメイドで製作しています。一般的なマンションなどのエレベーターというよりは、ホテルやショッピングモールなど、より意匠性(いしょうせい:デザインの工夫や美的特徴のこと)の高いエレベーターの部品を扱うことが多いですね。某有名テーマパークや、誰もが知っている高層ビルなどにも当社の製品が使われていたりするので、もしかしたら皆さんにもどこかでお目にかかっているかもしれません。
また、当社はものづくりだけでなく、『事業活動はファンづくり』を基本理念として掲げており、『組織づくり』や『ファンづくり』といったところにも力を入れています。こちらも、ぜひ注目していただきたいポイントですね。」
――ファンづくり、ですか。狙いはどんなところにあるのでしょう?
小倉さん:「ひと昔前は、良い製品を作っていれば売れるという時代もありましたが、現在は競争環境も激しくなっており、品質の良さだけではうまくいきません。そこで我々は、競合他社と同じフィールドで闘い続けるのではなく、『自分たちのブランド力を高め、唯一無二の存在になろう』という考えに至りました。自らの価値を高めることで、お客様だけでなく我々スタッフも島田電機のファンになれる、そんな企業を目指していこうと。その結果、多くのメディアにも取り上げていただけるようになり、色々なところでファンになってくれる方も増えているのではないかなと思っています。」
――ブランド力を高めるために、具体的にはどのような活動をされているのでしょうか?
島田さん:「『企業は人なり』という言葉がありますが、まさにその通りで、人を中心とした組織づくりを心がけています。具体的には、『島田カルチャー』と題して、ヒューマンスキルの向上や従業員同士で感情を共有できるイベントなど、『働きたくなる30以上の仕組み、仕掛け』を設定し、エンゲージメントを重視した環境を大事にしています。例えば、社内には『ボタンちゃんカフェ&バー』という施設があるのですが、こちらは仕事を終えたスタッフ同士が自由にお酒を飲みかわせる場所となっており、意見交換の場としても役立っています。ビールからワインまであらゆるお酒を取りそろえており、もちろんお金はかかりません。飲み放題ですよ。」
島田電機のマスコットキャラクター「ボタンちゃん」のネオンが眩しい、本格的なバースペース。さまざまな種類のお酒が、所狭しと並べられています。フードとして、近所のお米屋さんから取り寄せたおにぎりが並ぶこともあるんだとか。
――社内で、しかも無料でお酒が飲めるなんて、夢のようですね!?
島田さん:「かつて、多くの企業がそうだったように、当社も人と人とのコミュニケーションを大事にしていきたいんです。スタッフ同士が素で接して、何でも話せる関係になることで、自由な発想を促したいというのもあります。ただし、昔のやり方をそっくり真似るのではなく、時代に合った新しいコミュニケーションの形を見つけていきたいとは思いますね。」
「自分を解放することで、自由な発想をしてほしい」と語る島田社長。業務以外の部分でもスタッフとの交流を増やし、人同士のつながりを第一に考えているのだそうです。
――島田カルチャー、そして人と人のつながりを重視した組織づくり。ステキな試みだと思います!他にどんな活動がありますか?
小倉さん:「島田電機のことをもっと知ってもらいたい!という思いで工場見学(取材時は休止中)を始めたところ、希望者が殺到し、ありがたいことに抽選による当選確率が1%という大人気コンテンツとなりました。そういった経験を踏まえ、当社のボタンへの情熱を注ぎ込む形で誕生したのが、ボタンのテーマ空間「OSEBA」です。OSEBAは、ボタンを通して、お子様からご年配の方まで誰でも楽しめるような内容になっています。当社にとって、ファンづくりの集大成とも言えるような施設ですね。」
ボタンの形にプレートを切り抜いているところ。このようにボタンや到着灯などの製作現場を見られる工場見学は現在休止中(2024年11月時点)ですが、今後再開する予定だそうなので、楽しみに待ちたいところです……!
1000個以上のあらゆるボタンが押し放題という、島田電機の大人気コンテンツ「OSEBA」。ボタンで遊ぶだけでなく、ボタンの製造工程や歴史などを見て学ぶこともできます。ちなみに、「OSEBA」の発音は「お世話」と同じだそうです(笑)。
――島田電機の自由でユニークな発想、そして人とのつながりを大事にする想いが感じられました。良いお話をありがとうございました!
【ここが知りたい!匠の技①】
これぞ島田カルチャー!オフィスのテーマは「一緒に働く」。
島田電機のオフィスと製造スペース(工場)は同じ建屋の中にあり、全てのスタッフがまさに一体となって業務を行っています。特徴的なのは、PC作業をするオフィススペースと、検品などの作業スペースが地続きになっていること。一般的に、オフィスは部署ごとに部屋が分かれていたり、パーテーションで区切られていたりすることが多いですが、島田電機の場合は仕切りが極端に少なく、オープンな状態です。
「自由でフラットな社風」を目指す組織風土の通り、フロア全体がフラットに繋がっています。天井も高く、とても開放的なオフィス空間です!
これは、「一緒に働く」をコンセプトにした「島田カルチャー」の一環で、常に社内の動きを感じ、無意識に情報共有ができるような空間を目指して作られたものだそうです。外部の方に現場を「魅せる」ことも常に意識されているそうで、汚れやすい製造スペースの床をあえて白くすることで綺麗な職場づくりを心がけるなど、オフィス内のこだわりポイントも盛りだくさん。シンプルでありながらも「オシャレなラボ感」があり、島田人のアイディアが詰まったオフィスであると感じました。
デザイン性の高い社内は、まるでショールームのよう。ドアがない部屋が多く、誰が何をしているのか、ひと目でわかりやすい作りになっているのが印象的でした。
■島田電機の「ボタン」に見る、エレベーターの未来
ここからは、島田電機で作られているボタンや、そのメカニズムについて学んでいきたいと思います。ボタンに詳しいのはもちろん、板金加工のエキスパートでもある、島田電機製造部の齋藤太郎(さいとう たろう)さんにお話を伺いました。
【お話を伺った人】
島田人No.003 齋藤 太郎(さいとう たろう)
製造部板金グループ所属の技士。板金加工に懸けるアツい思いから、ついた異名は「日本一、カド(切断面)を気にする職人」。やる気フレーズは「大丈夫何とかするから」で、言葉通り同僚からの人望も厚い。「情熱を内に秘めた島田人」としても知られている。
――早速ですが、島田電機で製造されている製品の特徴を教えていただけますか?
齋藤さん:「当社は、エレベーターホールや操作盤に使われる『開』『閉』『矢印』のような押しボタンや、その周囲に使われるフレーム、到着灯などを製造しています。いわゆる量産品とは異なり、全てオーダーメイドの特注品ですので、手作り感に関しては特徴的であるかと思います。例えばボタンのデザインひとつを取っても、クライアントの要望に合わせてフォントや材質などを選定しながら、建物にマッチするよう工夫しています。唯一無二のデザイン性という部分は、やはり特注品の魅力と言えるのではないでしょうか。また、研磨のような仕上げ工程は職人が手作業で行っており、人の手で実際に触ったときに手触りが良いか、バリ(突起)が指に引っかかってケガをしないかなど、感覚的な部分や安全面に至るまで細かくチェックをしています。」
皆さんおなじみ、エレベーターのボタン。右上にある三角の小さなパーツは「文字芯」と呼ばれるもので、数字の4などを作るとき、削られたアクリルの中央にはめるステンレス板のこと。この小さな部品を手作業ではめ合わせて、綺麗なデザインの文字を作っていきます。
こちらは「ピン打ち点字」と呼ばれる作業。エレベーターボタンの周囲にある点字を作るため、
職人さんが手作業でピンを打ち込んでいます。非常に細やかな作業です……!
エレベーターボタンのフレームを、ヤスリで磨いて綺麗にしています。
バリを取り、滑らかな面を出すことで、美しさと安全性に優れた製品が出来上がるのだそうです。
――たしかに、島田電機のボタンは一見してスタイリッシュなものが多いように思います!職人さんの手作業が入ることで、安全性が高いというのも嬉しいですね。では、こちらで作られているエレベーターのボタンと、一般的な家電製品に使われているボタンでは、どんな違いがあるのでしょうか?
齋藤さん:「一般的に、家電製品のボタンは信号をオン、オフするためのスイッチという意味合いが強いかと思います。それ故にデザインはあまり重視されておらず、シンプルな形状のものが多いように感じますね。それに対して、当社のエレベーターボタンは意匠性を重視しており、建物や空間にフィットしたものばかりです。独自性が高く、見た目にも楽しんでいただけるのではないでしょうか。また、エレベーターは多くの人が利用するため、ボタンを押す回数も非常に多くなります。耐久性というのも重要な要素で、当社のボタンは20~30年の使用に耐えるほど頑丈に作られています。これも一般的な家電製品のボタンとは異なる点かと思いますね。」
中央にあるボタンは、アクリル板の向こう側も意匠品(デザイン部)です。クリアパネルのボタンは、非常に洗練されたデザインで高級感がありますね!ボタンだけでなく、ボタンの周囲を美しく見せるために工夫されているのがわかります。
――島田電機のエレベーターボタンは、デザイン性と耐久性がポイントなんですね。では次に、ボタンの進化について伺いたいと思います。現在、エレベーターのボタンも次々と新しいものが開発されていると思いますが、近年の技術的な進歩というと、どんなものが挙げられるでしょうか?
齋藤さん:「コロナ禍で特に注目されたのが、『非接触型のボタン』です。タイプはいくつかあるのですが、基本的にはボタンについているセンサーが指の接近を感知し、実際にボタンを押さなくてもボタンが反応するというものです。物理的な接触を避けられるのでウィルスなどの感染対策には重宝しますが、近付いただけで反応するので誤作動が起きやすいという短所もあります。あとは、『液晶画面が内蔵されているボタン』というのもありますね。ボタン自体が画面になっており、ビジュアル面でインパクトのあるものです。ボタンを押した時の反応なども画面内で表現できますし、今後進化していく製品ではないでしょうか。ただ、使いやすさという面で考えると、シンプルな押しボタンの操作性やわかりやすさは抜群で、現時点で必ずしも新しい技術が良いとまでは言えないかもしれませんね。」
こちらが、液晶画面内蔵ボタン。ボタンが画面になっており、数字がデジタル表示されています。実際に押してみると……
画面にイナズマのようなエフェクトが表示されました!このように、ボタンに演出を加えることが可能です!カッコイイ!
――お子さんからご年配まで、さまざまな世代の方が使うことを考えると、見た目だけでなく、シンプルな使いやすさも大事なんですね。では、数々のボタンを開発されてきた斎藤さんから見て、「良いボタン」とはどのようなボタンでしょうか?
齋藤さん:「デザイン性に優れ、建物に調和したボタンですね。ボタン単体として見た目が良くても、建物の雰囲気に合っていない場合はあまり良いボタンとは言えません。意匠品としてデザインの良さを守りつつ、その場所や建物にフィットしたボタンを見ると、良いボタンだなと思います。」
――建物に調和したボタン、素敵ですね!今までそんな視点でボタンを見たことがありませんでしたが、今後ボタンを見る目が変わりそうです。では最後に、これからエレベーターのボタンは、どのように進化していくと思われますか?
齋藤さん:「先ほどの液晶画面付きのボタンもそうですが、やはり『デジタル化』は進んでいくのだと思います。エレベーターに限定して言えば、ボタンの代わりに社員証などをセキュリティゲートにかざし、目的のフロアに向かうエレベーターをあらかじめ呼び出しておくというような技術も使われ始めています。ボタンの代わりにカードを使うワケですが、これもある意味ではボタンの進化した姿のひとつかもしれませんね。」
――カードで目的階へのエレベーターを呼び出せるのはすごいですね!待ち時間が長い高層ビルのオフィスなどでは特に重宝しそうです。では、今後はデジタル化されたボタンやカードが主流になるのでしょうか?
齋藤さん:「新しい技術は次々に出てくると思いますが、一方でこれまで使ってきたアナログの押しボタンにも操作のわかりやすさや安心感などの長所があり、まだしばらくは主力で使われていくと思いますね。今後は、そういったアナログの良さを残しながら、新しい技術を取り入れていきたいと思っています。」
車椅子の利用者が押しやすいように工夫された、足元用のボタン。足で操作するので、パーツが厚く、とても頑丈な作りになっています!
――エレベーターボタンのこれからが楽しみになってきますね!島田電機のボタンについて、齋藤さんにお話を伺いました。齋藤さん、ありがとうございました!
【ここが知りたい!匠の技②】
工場内部をちょこっと見学!エレベーターボタンができるまで
ここでは、島田電機のエレベーターボタンがどのようにして作られているのかをご紹介します!素材を切ったり削ったり、最先端の機械もたくさん使われているのですが、完成までには意外にも人の手による作業が多い点に驚かされます。島田電機のこだわりでもある、職人さんの技術にも注目しながらご覧ください。
①アクリル切削(せっさく)
MC(マシニングセンタ)という機械を用いて、ブロック状のアクリルを必要な大きさ、形状に切り出します。
プログラムされたとおりに、ボタンの原型となる部分が切り分けられます。奥の方には、削られたアクリル片が雪のように積もっています!
②ポリセット加工
削り出したアクリルに矢印や文字などのマークを掘り込み、塗料を流して固めます。マーク部分が剝げにくく、マークを印刷するタイプのボタンに比べて表示が長持ちするのが特徴なんだそうです。マークの種類によっては、ここで文字芯(数字の0や8などを作るとき、くり抜かれる部分にはめるステンレス板)をはめ込む作業が行われます。
ボタンのマーク部分は、アクリルを削って作った溝に塗料を流し込んで作ります。マークが入って、だいぶボタンらしくなってきたのではないでしょうか?
③バフ研磨
高速で回転するバフ(布)にアクリルを押しあてて、研磨します。この工程によって、光沢にムラのない、綺麗なボタンに仕上がるそうです。こちらも、職人さんによる手作業です!
左に見える機械が、バフ研磨機。磨きを行うことで、アクリルの表面がツヤツヤになります!
④ボタンが完成!
バフ研磨でボタンの表面を綺麗に仕上げたら、いよいよ完成です!
職人さんの情熱が詰まったボタン、完成までの工程を知ると、これからさらに大事に使いたくなりますね!
完成したボタンのイメージ。ちなみに、このキーホルダーは島田電機オンラインストア、もしくはOSEBA内のガチャガチャなどで購入できます!職人さんが仕上げた本物のエレベーターボタンを使っているので、とても綺麗です!
■いよいよ「OSEBA」内部に潜入!
ここからは、再び小倉さんにお話を聞きながら、話題の施設「OSEBA」内部をチェックしていきたいと思います!「1000のボタン」をはじめとするボタンの数々、本当に楽しみです!小倉さん、よろしくお願いします!
小倉さん:「はい、よろしくお願いします!ではまず、階段で3Fまで上がっていただきますので、頑張ってまいりましょう!」
――あ、ここはエレベーターじゃないんですね……(笑)。わかりました、では移動しながら、OSEBAのコンセプトについて簡単に教えていただけますか?
小倉さん:「はい(笑)。OSEBAは、2024年の7月にオープンした施設で、「押す」をテーマにした遊び空間です。もともと島田電機は知名度がそれほど高くない、ニッチな町工場でしたので、『まずはどうにかして島田電機の事を知ってもらいたい!』というところから企画が始まりました。それから広報活動や工場見学などのコンテンツに力を入れるようになり、『事業活動はファンづくり』という基本理念も生まれました。そうして少しずつお客様に当社の事を知ってもらえる機会が増えはじめ、今年ついに誕生したのがOSEBAです。島田電機の文化や、ボタンの魅力、そしてお客様への思いを詰め込んだOSEBAは、当社にとってまさにファンづくりの集大成と言える施設です。ぜひ皆さんに楽しんでいただきたいですね。」
――広報活動の一環として地道に積み上げてきたコンテンツが大ブレークし、現在の人気に繋がったんですね。お話を伺っている間に、エレベーターが見えてきました。ここがOSEBAの入り口でしょうか?
小倉さん:「はい!こちらが入り口です!それでは、OSEBAでボタンの世界をお楽しみください~!」
「エレベーターがあるのに階段で上がってきたんですか……!」と訊きたくなりましたが(笑)、
実はこのエレベーターにも仕掛けが……!(ぜひ現地でお確かめください!)
■ついに!1000のボタンとご対面!
――これが「1000のボタン」ですか…!エレベーターのボタンだけでなく、変わったボタンがたくさんありますね!これらは全て実際に押せるんですか?
小倉さん:「はい、全て押し放題です(笑)。『あったらいいな、こんなボタン』という企画で一般の方から募集したボタンや、当社の従業員が考えた面白ボタンもありますので、ぜひ見つけて押してみてください。あと、実はこの中にひとつだけ仕掛けがあるボタンがありまして……」
――仕掛け!それを探すのも面白そうですね。お子さんが夢中になるのもわかる気がします。
なんだかボタンってワケもなく押したくなりますもんね。ポチポチ……ポチポチ……あっ!
小倉さん:「あ、早速仕掛けを見つけちゃいましたね!」
――ビックリしました(笑)。なるほど、これはぜひ現地で確認していただきたいですね!
1000個ものボタンが並んでいる姿は実に壮観です……!齋藤さんによると、このボタンをボードにはめ込む作業が非常に大変だったそうです。納得!
なかには押せない(経済的に)ボタンも。修行を積んで出直しますとボタンの前で誓いました。
――それにしても、凄いボタンの数ですね!小倉さんのお気に入りのボタンはどれですか?
小倉さん:「ひとつに絞るのはとても難しいですが、やはり気になるのは『絶対に!押すな』ボタンですね。押すなと言われると余計に押したくなるあの願望が、OSEBAでなら叶います(笑)。」
確かに、押したくなる不思議なオーラが……(笑)。普段は押せないボタンも、OSEBAなら押し放題です!
――わかります、これは絶対押しちゃうヤツですね!他に、OSEBAに来たらここを見てほしい!というポイントはありますか?
小倉さん:「『1000のボタン』のほか、ボタンの作り方や島田電機の歴史を解説しているコーナーなどもあり、遊ぶだけでなく学べる施設であるのもポイントです。ボタンを通じて、我々島田人のボタンに対する想いや情熱に触れ、共感していただけたら嬉しいですね。」
島田電機創業からの歴史を、年表とともに学ぶことができます。
ボタンや到着灯など、島田電機製品の展示コーナーも。意匠性の高さがよくわかります。
ボタン早押しチャレンジコーナーもあります!小倉さん、パーフェクトゲームを達成してくださいました……!(私は212点でした……)
――おかげさまで、ボタンの世界を堪能できました!小倉さん、そしてボタンについて教えてくださった齋藤さん、ありがとうございました!それでは最後になりますが、お二人にとって、「ボタンを押す」とはどんなことか、教えていただけますでしょうか?
齋藤さん:「『新たなステージの、扉を開けること』でしょうか。自分の意志でボタンを押して、それが新しいステージへ踏み出すきっかけになれば良いなと思いますね。」
小倉さん:「『ボタンを押せば、何かはじまる。』ですね。ほとんど齋藤さんに言われてしまいましたが(笑)、やはりボタンを押したことが何かのスタートになれば嬉しいなと思います。」
――まさに島田カルチャーを言語化したような、ステキなお言葉をいただきました!島田電機製作所の皆さん、ありがとうございました!
■押すをテーマにした遊び空間「OSEBA」
- 営業日:毎週月曜~金曜、島田電機製作所の営業日(定休日:毎週水曜日)
- 入場時間:①10:00~11:00 ②11:00~12:00 ③13:00~14:00 ④14:00~15:00 ⑤15:00~16:00 ⑥16:00~16:30(最終入場:16:30)
- 入場料:大人(中学生以上):1,000円 小人(1歳~小学生以下):500円
0~1歳未満:無料
昇降機業界の方:500円(来場時に名刺をご提示ください)
■編集後記
「遊び心」。今回の取材を通して感じたのは、まさにそれでした。仕事に「遊び心」を上手く取り入れることで、企業も人も、こんなに面白くなるんだと。そして、面白い企業には、魅力的な人たちが集まるんだということも改めて学びました。
島田電機では、「ボタンが好きな人」、「ボタンをつくり続ける島田電機が好きな人」、「OSEBAに遊びに来てくれた人」など、ボタン愛にあふれた人のことを「ボタンズ」と呼んでいるそうです。今回、OSEBAでたくさんのボタンを押し、その魅力に触れたことで、私もさらにボタンが好きになりました。(もちろん島田電機も)これで私も一人前のボタンズになれたかな、オフィスに向かうエレベーターのボタンを眺めながら、そんなことを思っています。
そうそう。晴れてボタンズとなったからには、こちらもご紹介しておきたいと思います。島田電機の島田社長自らが作詞をしたというボタンズのためのカンパニーソング、その名も「ボタンを押せば」。島田電機のマスコットキャラクター「ボタンちゃん」が登場する、かわいらしい一曲です。ぜひ、こちらも聴いてみてください!
(ものづくり新聞 木戸一幸)